ICTソリューション事業を手掛けるテックファーム株式会社(東京都新宿区)は、製造業や教育業界で広がるXR活用に対応するため、集合型VR研修の運営効率を高める「XRデバイス統合管理ツール」を開発した。
本ツールは、講師が複数の受講者デバイスを一括操作できるほか、リアルタイムで各受講者の視点をモニタリングできる点を特長とする。これにより、デバイス起動や研修開始までのばらつき、講師側の操作の煩雑さといった集合型VR研修の現場が抱える課題を解決し、スムーズな運営と教育効果の最大化を目指す。特に、現場に近い体験型教育が可能な集合型VR研修への注目度が高まる中で、同社の開発は、VR研修の普及を一段と推進するものとして期待される。
なお、2025年7月に開催される「XR総合展」にて初公開される予定だ。
集合型VR研修の広がりと現場の課題
近年、製造業や教育分野を中心に、実践的なスキル教育を目的としたXR(VR/AR/MR)研修の導入が進んでいる。中でも、防災訓練や工場での安全教育、接客対応など、複数名が同時に参加する集合型VR研修は、より現場に近い形での体験を可能にすることから注目を集めている。しかしながら、受講者ごとのデバイス起動や研修開始までの時間差、講師側での個々のデバイス操作や全体の進行管理の煩雑さなどが、円滑な研修運営の障壁となっていた。これらの課題は、XR技術を使った教育の潜在能力を十分に引き出す上でのボトルネックとなっていた。
「XRデバイス統合管理ツール」の機能

現場の課題を受けて開発された「XRデバイス統合管理ツール」は、講師が複数の受講者デバイスを統合的に管理・操作できる点が最大の特徴である。具体的には、講師はデバイスの一括起動・終了やデータ送信を行うことができる。また、リアルタイムで各受講者の視点をモニタリングし、研修の進行状況を確認しながら制御することが可能となる。
本ツールはストリーミング方式を採用しており、講師は受講者のリアルタイムな視点を確認できるだけでなく、特定の受講者の画面を録画し、お手本映像や振り返り用コンテンツとして共有することで、教育効果の最大化に貢献する。初期対応デバイスはMeta Quest™だが、将来的には他のデバイスや複数拠点での遠隔管理にも対応する予定だ。これにより、多様なVRデバイスを用いた研修や、遠隔地からの研修実施・管理も視野に入る。
他ツールとの差別化と将来展望
多くのXR関連ツールが360度動画ベースの簡易コンテンツや限定的な一括操作機能に留まる中、本ツールは3Dリアルタイム環境下での集合研修に対応し、講師側の直感的な操作に特化した設計を備えている点で他に類を見ない。
また同社は、本ツールのさらなる機能拡張も視野に入れており、今後、研修コンテンツをユーザー自身が編集・更新できるCMS(コンテンツ管理システム)機能、受講状況・履歴を可視化できるLMS(学習管理システム)機能、そして講師が任意のタイミングで研修シナリオを操作できるトリガー機能の実装を目指す。これらの機能が加わることで、より柔軟で詳細な研修設計・運用・評価が可能となり、教育現場でのXR活用が一段と推進されると期待される。
防災から接客まで、多様な活用シーン
本ツールは、幅広い分野でのXR研修に活用できる。具体的な活用例としては、以下が挙げられており、実践的なシミュレーションを通じたスキル習得やチーム連携訓練に有効である。
- 工場内火災を想定した消火訓練: 複数名の受講者がVR空間で同時に消火活動を行い、講師はそれぞれの視点をリアルタイムで確認し、チームワークや行動の適切さを評価する。
- 交通機関での異常対応訓練: 車掌や駅員役がVR内で連携し、乗客対応をシミュレーション。将来的にトリガー機能により急病人発生などのイベントを挿入し、対応力を試すことが可能となる。
- 接客業でのロールプレイ研修: 実際の店舗を模したVR環境で、レジ応対や外国人対応、カスタマーハラスメント対応などを実践。講師は録画・フィードバックを通じてスキル向上を促す。
2025年「XR総合展」で初披露
2025年7月2日(水)~4日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催される「第5回 XR・メタバース総合展 夏」にて、本ツールが初公開される予定だ。会場では、防災訓練をテーマにしたマルチプレイVR研修のデモンストレーションや、講師用管理ツールの操作体験が可能であり、導入イメージを具体的に体感できる機会となる。