独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館(東京都台東区)、独立行政法人国立文化財機構文化財活用センター(東京都台東区)、TOPPAN株式会社(東京都文京区)は、国宝「阿修羅像」をテーマとしたVR作品『興福寺 国宝 阿修羅像』を、東京国立博物館 東洋館内の「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」にて、2025年9月23日(火・祝)から12月21日(日)まで再上演する。
この再上演は、東京国立博物館本館で開催される特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」(会期:2025年9月9日(火)~11月30日(日))の開催に合わせ、2014年以来、約10年ぶりとなり、国宝である阿修羅像の魅力をデジタル技術で最大限に引き出し、実物展示では実現し得ない多角的な鑑賞体験を提供する。具体的には、三次元計測や色彩計測技術によって得られたデジタルアーカイブ情報を活用し、像のあらゆる方向からの鑑賞や、仏像の制作技法、1300年にわたる歴史的背景、そして光明皇后に着目した誕生秘話に迫る内容となっている。
※国宝 阿修羅像は特別展での展示予定はありません。
VR作品『興福寺 国宝 阿修羅像』について

本VR作品は、2009年に開催された興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」を契機に製作され、その後ミュージアムシアター向けに改編されたものとなる。かつて阿修羅像が安置されていた興福寺の西金堂を建立した「光明皇后」に焦点を当て、朝廷で激しい権力闘争が繰り広げられた激動の時代に、仏教に基づいた国づくりを目指した彼女の視点から、阿修羅像誕生の物語や、1300年間幾度もの火災を乗り越え、人々によって守り伝えられてきた歴史を紹介。また、現代の人々を魅了し続ける繊細で複雑な表情に込められた想いに迫る内容となっている。本作品の総監修は法相宗大本山興福寺、監修は金子啓明氏と鈴木嘉吉氏が務め、製作・著作を株式会社朝日新聞社とTOPPAN株式会社が行っている。
阿修羅像を様々な角度から鑑賞
天平彫刻の代表作であり、その憂いを秘めた表情で幅広い層に人気の高い阿修羅像は、三次元計測・色彩計測技術によって取得したデジタルアーカイブ情報と高精細な撮影により、その姿を余すところなく再現されている。これにより、実物展示では不可能な、あらゆる方向から至近距離で阿修羅像を鑑賞することが可能だ。
八部衆(はちぶしゅう)のうちの阿修羅
阿修羅像は、奈良時代に造られた八部衆像のうちの1体として造られた。本VR作品では、東京国立博物館所蔵品も交えながら、個性豊かな八部衆について紹介し、仏教における阿修羅の由来について理解を深めることができる。
仏像制作の技法を紹介
阿修羅像は、写実的で柔らかな表現が特徴の「脱活乾漆造(だっかつかんしつぞう)」という技法で造られている。本VR作品ではその技法について詳しく解説し、造形面から見た阿修羅像の魅力に注目する。また、CGモデル上で表面の彩色を取り去り、阿修羅の心の変化を表す3つの表情もVRで再現されている。
CGモデル上で表面の彩色を取り去り、阿修羅像の造形に注目

阿修羅の心の変化を表す3つの表情

VR作品『興福寺 国宝 阿修羅像』上演案内
- 場所:
東京国立博物館東洋館地下1階 TNM & TOPPAN ミュージアムシアター - 期間:
2025年9月23日(火・祝)~12月21日(日) - 上演日時:
- 水・木・金:
12:00、13:00、14:00、15:00、16:00 - 土・日・祝・休日:
11:00、12:00、13:00、14:00、15:00、16:00
※所要時間約35分、 各回定員90名
※上演スケジュール、定員は都合により変更する場合あり。
- 水・木・金:
- 鑑賞料金:
- 高校生以上:600円
- 中学生・小学生:300円
- 未就学児、障がい者とその介護者:各1名無料
※チケットは、シアター前券売機で購入。
※開演時間までにチケットの購入が必要(当日券のみ)。
※高校生を除く18歳以上70歳未満の方は、別途博物館入館料が必要。
「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」について
本VR作品が上演される「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」は、VR技術による文化財の新しい鑑賞方法を体験できる施設で、「バーチャルリアリティで時空を超える」をコンセプトに、東京国立博物館の収蔵品を中心とする文化財デジタルアーカイブをVR技術で可視化している。超高精細4Kプロジェクタと300インチの迫力ある大型スクリーン、そして専属のナビゲーターによるライブ上演が、コンピュータが生成する三次元空間の中にいるかのような没入感を提供する。文化財の往時の姿の再現や、肉眼では鑑賞が難しい細かなディテールの拡大など、デジタル技術ならではの文化財との新たな出会いと楽しみ方を創出する空間となっている。